おもった。そして渡瀬さんに対する自分の考えをいおうとしているうちに、母は支度をすまして茶の間にはいってきた。いつものとおり地味すぎるような被布を着て、こげ茶のショールと診察用の器具を包んだ小さい風呂敷包とを、折り曲げた左の肘《ひじ》のところに上抱きにしていた。いっさいの香料を用いないで、綺麗さっぱりとした身だしなみは母にふさわしいものだった。母はストーヴの火具合を見てから、親しみ深くおぬいのそばに来て坐った。そして遊んでいる右の手でおぬいの羽織の衣紋がぬけかけているのを引き上げながら、
「どう思うの」
ともう一度静かに尋ねた。
「快活なおもしろい方だと思いますわ」
とおぬいは平気で思ったとおりを答えた。
「あなたにあっては誰でもいい方になってしまうのね」
ほほえみながらそういって母はちょっと言葉を途切らしたが、
「私もほんとはあなたの思ってるとおりに思うのだけれども、世間ではそうはいっていないらしい。中にも教会の方などには聞き苦しいとおもうほどひどい評判をなさるのもあって、どうして星野さんが、あんな人を推薦《すいせん》なさったんでしょうと、星野さんまで疑うらしい口ぶりでした。私と
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