、清逸の方に近づくが早いか、拳を固めて清逸の頭から顔にかけてところきらわず続けさまになぐりつけた。それは思わず清逸をたじろがすほどの意外な素早さだった。
「出ていけ、これは俺の部屋だい。出ていかねばたたき殺すぞ」
やがて牛のうめき声のような口惜し泣きが、立ったままの純次の口からおめきだされた。
清逸は体じゅうがしびれるのを覚えて、俯向《うつむ》いたまま黙っているほかはなかった。
「出ていかねえか」
純次は泣きじゃくりの中から、こう叫んでいらだちきったように激しく地だんだを踏んだ。次の瞬間には何をしだすか分らないような狂暴さが清逸に迫ってきた。
清逸はしん[#「しん」に傍点]とした心の中で、孵化場《ふかじょう》あたりから来るらしい一番鶏の啼き声をかすかに聞いたように思った。部屋の中はしかし真暗闇だった。
純次は何か手ごろの得物をさぐっているのらしくごそごそと臥床《ふしど》のまわりを動きはじめていた。だんだん激しくなり増さるような泣きじゃくりの声だけがもの凄く部屋じゅうに響いていた。
「待て純次、俺は母屋に行くから待て」
清逸は不思議な恐怖に襲われ、不意の襲撃に対して用心をしな
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