顔には相違なかったが、それは喉《のど》の奥から手の出そうな渋い顔だった。発声蓄音機の方は成功したところが、そう需用《じゅよう》のたくさんありそうなものではない。日本酒が高価になるばかりな時節に、ウ※[#小書き片仮名ヰ、272−上−18]スキーは当るに違いない。これは新井田氏がすぐ気のつきそうなことだ。ウ※[#小書き片仮名ヰ、272−上−20]スキーという新時代のものらしい名前そのものも、新井田氏には十分の誘惑になっているはずだ。
 渡瀬は計算用の原稿紙を一まとめにして懐ろにしまいこみながら、馬鈴薯から安価な焼酎《しょうちゅう》と、そのころ恐ろしく高価なウ※[#小書き片仮名ヰ、272−下−2]スキーとが造りだされる化学上の手続を素人《しろうと》わかりがするように話して聞かせた。新井田氏の顔はだんだん和らいできた。投機者には通有らしい、めまぐるしく動く大きな眼――それはもう一歩というところで詐欺師《さぎし》のそれと一致するものだが――の眼尻に、この人に意外な愛嬌を添える小皺ができはじめた。それは自分の意見に他人を牽《ひ》き寄せようとする時には、いつでも自然に現われてくるのだった。人相見にで
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