ろっこしくって困りますよ」
計算だって研究の一つだい。道具を家で研《と》ぎすましておいて仕事場に来る大工があってたまるものか。いい加減な眼腐れ金をくれているのにつけあがって、我儘もほどほどにしろ。渡瀬は腹の中でこう思いながらも、顔つきにはその気配も見せなかった。
「じつは僕もこの仕事は早く片をつけたいんです。学校のラボラトリーでやっている実験ですが、五升芋《ごしょういも》(馬鈴薯《ばれいしょ》の地方名)から立派なウ※[#小書き片仮名ヰ、272−上−3]スキーの採《と》れる方法に成功しそうになっているんです。これがうまくゆきさえすれば、それもひとつ見ていただきたいと思っているもんだから……」
新らしがりと、好奇心と、慾との三調子で生きているような新井田氏にこれが訴えていかないはずがない。渡瀬は新井田氏の顔が、今までの冷やかにも倨傲《きょごう》な表情から、少し取り入るような――しかもその急激な変化に自分自身多少のうしろめたさを示さないではない――それに変っていくのを見てしすましたりと思った。
「それもまあそれでしょうがね。それにつけてもこっちの方を片づけていただかないじゃあね」
渋い
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