碁石を呑んだ八っちゃん
有島武郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)八《や》っちゃんが
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一生懸命|真面目《まじめ》になって、
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八《や》っちゃんが黒い石も白い石もみんなひとりで両手でとって、股《もも》の下に入れてしまおうとするから、僕は怒ってやったんだ。
「八っちゃんそれは僕んだよ」
といっても、八っちゃんは眼《め》ばかりくりくりさせて、僕の石までひったくりつづけるから、僕は構わずに取りかえしてやった。そうしたら八っちゃんが生意気に僕の頬《ほっ》ぺたをひっかいた。お母さんがいくら八っちゃんは弟だから可愛《かあい》がるんだと仰有《おっしゃ》ったって、八っちゃんが頬ぺたをひっかけば僕だって口惜《くや》しいから僕も力まかせに八っちゃんの小っぽけな鼻の所をひっかいてやった。指の先きが眼にさわった時には、ひっかきながらもちょっと心配だった。ひっかいたらすぐ泣くだろうと思った。そうしたらいい気持ちだろうと思ってひっかいてやった。八っちゃんは泣かないで僕にかかって来た。投げ出していた足を折りまげて尻《しり》を
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