《うしろ》から八っちゃんを抱いて、
「あら八っちゃんどうしたんです。口をあけて御覧《ごらん》なさい。口をですよ。こっちを、明《あかる》い方を向いて……ああ碁石を呑んだじゃないの」
というと、握り拳をかためて、八っちゃんの脊中を続けさまにたたきつけた。
「さあ、かーっといってお吐きなさい……それもう一度……どうしようねえ……八っちゃん、吐くんですよう」
婆やは八っちゃんをかっきり膝の上に抱き上げてまた脊中をたたいた。僕はいつ来たとも知らぬ中《うち》に婆やの側に来て立ったままで八っちゃんの顔を見下《みおろ》していた。八っちゃんの顔は血が出るほど紅《あか》くなっていた。婆やはどもりながら、
「兄さんあなた、早くいって水を一杯……」
僕は皆まで聞かずに縁側に飛び出して台所の方に駈《か》けて行った。水を飲ませさえすれば八っちゃんの病気はなおるにちがいないと思った。そうしたら婆やが後《うしろ》からまた呼びかけた。
「兄さん水は……早くお母さんの所にいって、早く来て下さいと……」
僕は台所の方に行くのをやめて、今度は一生懸命でお茶の間の方に走った。
お母さんも障子を明けはなして日なたぼっこ
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