燕と王子
有島武郎

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)燕《つばめ》という鳥は

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一人の年|老《と》った
−−

 燕《つばめ》という鳥は所をさだめず飛びまわる鳥で、暖かい所を見つけておひっこしをいたします。今は日本が暖かいからおもてに出てごらんなさい。羽根がむらさきのような黒でお腹《なか》が白で、のどの所に赤い首巻《くびま》きをしておとう様のおめしになる燕尾服《えんびふく》の後部《うしろ》みたような、尾のある雀《すずめ》よりよほど大きな鳥が目まぐるしいほど活発に飛び回っています。このお話はその燕のお話です。
 燕のたくさん住んでいるのはエジプトのナイルという世界中でいちばん大きな川の岸です――おかあ様に地図を見せておもらいなさい――そこはしじゅう暖かでよいのですけれども、燕も時々はあきるとみえて群れを作ってひっこしをします。ある時その群れの一つがヨーロッパに出かけて、ドイツという国を流れているライン川のほとりまで参りました。この川はたいそうきれいな川で西岸には古いお城《しろ》があったり葡萄《ぶどう》の畑があ
次へ
全21ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
有島 武郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング