はもう結婚ができる。結婚をして人一倍の忠義ができる。神様のおめぐみ、ありがたいかたじけない。この玉をみつけた上は明日《あす》にでも御婚礼《ごこんれい》をしましょう」
と喜びがこみ上げて二人とも身をふるわせて神にお礼を申します。
これを見た燕はどんなけっこうなものをもらったよりもうれしく思って、心も軽く羽根も軽く王子のもとに立ちもどってお肩の上にちょんとすわり、
「ごらんなさい王子様。あの二人の喜びはどうです。おどらないばかりじゃありませんか。ごらんなさい泣いているのだかわらっているのだかわかりません。ごらんなさいあのわかい武士が玉をおしいただいているでしょう」
と息もつかずに申しますと、王子は下を向いたままで、
「燕や私はもう目が見えないのだよ」
とおっしゃいました。
さて次の日に二人の御婚礼がありますので、町中の人はこの勇ましいわかい武士とやさしく美しいおとめとをことほごうと思って朝から往来をうずめて何もかもはなやかな事でありました。家々の窓からは花輪や国旗やリボンやが風にひるがえって愉快《ゆかい》な音楽の声で町中がどよめきわたります。燕はちょこなんと王子の肩にすわって、今
前へ
次へ
全21ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
有島 武郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング