一房の葡萄
有島武郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)絵を描《か》く
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)十二|種《いろ》の絵具
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)※[#「※」は「ごんべん+虚の旧字体」、117−10]《うそ》つき
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一
僕は小さい時に絵を描《か》くことが好きでした。僕の通《かよ》っていた学校は横浜《よこはま》の山《やま》の手《て》という所にありましたが、そこいらは西洋人ばかり住んでいる町で、僕の学校も教師は西洋人ばかりでした。そしてその学校の行きかえりにはいつでもホテルや西洋人の会社などがならんでいる海岸の通りを通るのでした。通りの海添いに立って見ると、真青《まっさお》な海の上に軍艦だの商船だのが一ぱいならんでいて、煙突から煙の出ているのや、檣《ほばしら》から檣へ万国旗をかけわたしたのやがあって、眼がいたいように綺麗《きれい》でした。僕はよく岸に立ってその景色《けしき》を見渡して、家《いえ》に帰ると、覚えているだけを出来るだけ美しく絵に描《か》いて見ようとしました
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