しはしかしいつのまにか凪《な》ぎてしまって、あらしのあとの晩秋の夜はことさら静かだった。山内《さんない》いちめんの杉森《すぎもり》からは深山のような鬼気《きき》がしんしんと吐き出されるように思えた。こおろぎが隣の部屋のすみでかすれがすれに声を立てていた。わずかなしかも浅い睡眠には過ぎなかったけれども葉子の頭は暁|前《まえ》の冷えを感じて冴《さ》え冴《ざ》えと澄んでいた。葉子はまず自分がたった一人《ひとり》で寝ていた事を思った。倉地と関係がなかったころはいつでも一人で寝ていたのだが、よくもそんな事が長年にわたってできたものだったと自分ながら不思議に思われるくらい、それは今の葉子を物足らなく心さびしくさせていた。こうして静かな心になって考えると倉地の葉子に対する愛情が誠実であるのを疑うべき余地はさらになかった。日本に帰ってから幾日にもならないけれども、今まではとにかく倉地の熱意に少しも変わりが起こった所は見えなかった。いかに恋に目がふさがっても、葉子はそれを見きわめるくらいの冷静な眼力《がんりき》は持っていた。そんな事は充分に知り抜いているくせに、おぞましくも昨夜のようなばかなまねをしてし
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