早《すばや》く倉地の膝《ひざ》から飛びのいて畳の上に頬《ほお》を伏せた。倉地の言葉をそのまま信じて、素直《すなお》にうれしがって、心を涙に溶いて泣きたかった。しかし万一倉地の言葉がその場のがれの勝手な造り事だったら……なぜ倉地は自分の妻や子供たちの事をいっては聞かせてくれないのだ。葉子はわけのわからない涙を泣くより術《すべ》がなかった。葉子は突《つ》っ伏《ぷ》したままでさめざめと泣き出した。
 戸外のあらしは気勢を加えて、物すさまじくふけて行く夜を荒れ狂った。
 「おれのいうた事がわからんならまあ見とるがいいさ。おれはくどい事は好《す》かんからな」
 そういいながら倉地は自分を抑制しようとするようにしいて落ち着いて、葉巻を取り上げて煙草盆《たばこぼん》を引き寄せた。
 葉子は心の中で自分の態度が倉地の気をまずくしているのをはらはらしながら思いやった。気をまずくするだけでもそれだけ倉地から離れそうなのがこの上なくつらかった。しかし自分で自分をどうする事もできなかった。
 葉子はあらしの中にわれとわが身をさいなみながらさめざめと泣き続けた。

    二七

 「何をわたしは考えていたんだ
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