なたを判断しろとおっしゃるんですか」
 「そうね。……それでもようございましょうよ。とにかくそれはわたしが御相談を受ける事柄じゃありませんわ」
 そういってる葉子の顔は、言葉に似合わずどこまでも優しく親しげだった。古藤はさすがに怜《さか》しく、こうもつれて来た言葉をどこまでも追おうとせずに黙ってしまった。そして「何事も明らさまにしてしまうほうがほんとうはいいのだがな」といいたげな目つきで、格別|虐《しいた》げようとするでもなく、葉子が鼻の先で組んだりほどいたりする手先を見入った。そうしたままでややしばらくの時が過ぎた。
 十一時近いこのへんの町並みはいちばん静かだった。葉子はふと雨樋《あまどい》を伝う雨だれの音を聞いた。日本に帰ってから始めて空はしぐれていたのだ。部屋《へや》の中は盛んな鉄びんの湯気《ゆげ》でそう寒くはないけれども、戸外は薄ら寒い日和《ひより》になっているらしかった。葉子はぎごちない二人《ふたり》の間の沈黙を破りたいばかりに、ひょっ[#「ひょっ」に傍点]と首をもたげて腰窓のほうを見やりながら、
 「おやいつのまにか雨になりましたのね」
 といってみた。古藤はそれには答え
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