頼を受けてその責めを果たさなかったのは誠にすまないが、自分たちの力では手に余るのだから推恕《すいじょ》していただきたいと書いてあった。で、五十川女史は田川夫人がいいかげんな捏造《ねつぞう》などする人でないのをよく知っているから、その手紙を重《おも》だった親類たちに示して相談した結果、もし葉子が絵島丸で帰って来たら、回復のできない罪を犯したものとして、木村に手紙をやって破約を断行させ、一面には葉子に対して親類一同は絶縁する申し合わせをしたという事を聞かされた。そう古藤は語った。
「僕《ぼく》はこんな事を聞かされて途方に暮れてしまいました。あなたはさっきから倉地というその事務長の事を平気で口にしているが、こっちではその人が問題になっているんです。きょうでも僕《ぼく》はあなたにお会いするのがいいのか悪いのかさんざん迷いました。しかし約束ではあるし、あなたから聞いたらもっと事柄もはっきり[#「はっきり」に傍点]するかと思って、思いきって伺う事にしたんです。……あっちにたった一人《ひとり》いて五十川《いそがわ》さんから恐ろしい手紙を受け取らなければならない木村君を僕は心から気の毒に思うんです。
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