見ながら団扇《うちわ》をつかった。
 古藤はしばらく黙っていてから後ろを振り仰いで葉子を見やりつつ、
 「葉子さん……まあ、す、すわってください」
 と少しどもるようにしいて穏やかにいった。葉子はその時始めて、われにもなくそれまでそこに突っ立ったままぼんやり[#「ぼんやり」に傍点]していたのを知って、自分にかつてないようなとんきょ[#「とんきょ」に傍点]な事をしていたのに気が付いた。そして自分ながらこのごろはほんとうに変だと思いながら二人《ふたり》の間に、できるだけ気を落ち着けて座についた。古藤の顔を見るとやや青ざめて、こめかみの所に太い筋を立てていた。葉子はその時分になって始めて少しずつ自分を回復していた。
 「古藤さん、倉地さんは少しお酒を召し上がった所だからこんな時むずかしいお話をなさるのはよくありませんでしたわ。なんですか知りませんけれども今夜はもうそのお話はきれいにやめましょう。いかが?……またゆっくりね……あ、愛さん、あなたお二階に行って縫いかけを大急ぎで仕上げて置いてちょうだい、ねえさんがあらかた[#「あらかた」に傍点]してしまってあるけれども……」
 そういって先刻から
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