願《けちがん》を思い出して、心を鬼にしながら、
「貞《さあ》ちゃんといったらお返事をなさいな。なんの事です拗《す》ねたまね[#「まね」に傍点]をして。台所に行ってあとのすすぎ返しでもしておいで、勉強もしないでぼんやり[#「ぼんやり」に傍点]していると毒ですよ」
「だっておねえ様わたし苦しいんですもの」
「うそをお言い。このごろはあなたほんとうにいけなくなった事。わがままばかししているとねえさんはききませんよ」
貞世はさびしそうな恨めしそうな顔をまっ赤《か》にして葉子のほうを振り向いた。それを見ただけで葉子はすっかり[#「すっかり」に傍点]打ちくだかれていた。水落《みぞおち》のあたりをすっ[#「すっ」に傍点]と氷の棒でも通るような心持ちがすると、喉《のど》の所はもう泣きかけていた。なんという心に自分はなってしまったのだろう……葉子はその上その場にはいたたまれないで、急いで階下のほうへ降りて行った。
倉地の声にまじって古藤の声も激して聞こえた。
四一
階子段《はしごだん》の上がり口には愛子が姉を呼びに行こうか行くまいかと思案するらしく立っていた。そこを通り抜けて自分
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