出したように葉子のほうを向いてこう尋ねた。
「えゝ、しようがなくなっちまいました。この四五日ったらことさらひどいんですから」
「そうした時期もあるんだろう。まあたんといびらないで置くがいいよ」
「わたし時々ほんとうに死にたくなっちまいます」
葉子は途轍《とてつ》もなく貞世のうわさとは縁もゆかりもないこんなひょん[#「ひょん」に傍点]な事をいった。
「そうだおれもそう思う事があるて……。落ち目になったら最後、人間は浮き上がるがめんどうになる。船でもが浸水し始めたら埒《らち》はあかんからな。……したが、おれはまだもう一反《ひとそ》り反《そ》ってみてくれる。死んだ気になって、やれん事は一つもないからな」
「ほんとうですわ」
そういった葉子の目はいらいらと輝いて、にらむように倉地を見た。
「正井のやつが来るそうじゃないか」
倉地はまた話題を転ずるようにこういった。葉子がそうだとさえいえば、倉地は割合に平気で受けて「困ったやつに見込まれたものだが、見込まれた以上はしかたがないから、空腹《ひもじ》がらないだけの仕向けをしてやるがいい」というに違いない事は、葉子によくわかってはいた
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