にばかりならずにはいられなくなった自分が悲しかった。なんという情けないかわいそうな事だろう。そう葉子はしみじみと思った。
 だんだん葉子の涙はすすり泣きにかわって行った。倉地が眠りの中でそれを感じたらしく、うるさそうにうめき声を小さく立てて寝返りを打った。葉子はぎょっ[#「ぎょっ」に傍点]として息気《いき》をつめた。
 しかしすぐすすり泣きはまた帰って来た。葉子は何事も忘れ果てて、倉地の床のそばにきちん[#「きちん」に傍点]とすわったままいつまでもいつまでも泣き続けていた。

    三八

 「何をそう怯《お》ず怯《お》ずしているのかい。そのボタンを後ろにはめてくれさえすればそれでいいのだに」
 倉地は倉地にしては特にやさしい声でこういった、ワイシャツを着ようとしたまま葉子に背を向けて立ちながら。葉子は飛んでもない失策でもしたように、シャツの背部につけるカラーボタンを手に持ったままおろおろしていた。
 「ついシャツを仕替《しか》える時それだけ忘れてしまって……」
 「いいわけなんぞはいいわい。早く頼む」
 「はい」
 葉子はしとやか[#「しとやか」に傍点]にそういって寄り添うように倉
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