たくもあったが、同時にしんみり[#「しんみり」に傍点]と一別以来の事などを語り合ってみたい気もした。いつか汽車の中であってこれが最後の対面だろうと思った、あの時からすると木部はずっ[#「ずっ」に傍点]とさばけた男らしくなっていた。その服装がいかにも生活の不規則なのと窮迫しているのを思わせると、葉子は親身《しんみ》な同情にそそられるのを拒む事ができなかった。
 倉地は四五歩|先立《さきだ》って、そのあとから葉子と木部とは間を隔てて並びながら、また弁慶|蟹《がに》のうざうざいる砂道を浜のほうに降りて行った。
 「あなたの事はたいていうわさや新聞で知っていましたよ……人間てものはおかしなもんですね。……わたしはあれから落伍者《らくごしゃ》です。何をしてみても成り立った事はありません。妻も子供も里《さと》に返してしまって今は一人《ひとり》でここに放浪しています。毎日|釣《つ》りをやってね……ああやって水の流れを見ていると、それでも晩飯の酒の肴《さかな》ぐらいなものは釣れて来ますよハヽヽヽヽ」
 木部はまたうつろに笑ったが、その笑いの響きが傷口にでも答えたように急に黙ってしまった。砂に食い込む二
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