《ようぼう》でも服装でも自分らを蹴《け》落とそうとする葉子に対して溜飲《りゅういん》をおろそうとしているらしかった)少し色を失って、そっぽ[#「そっぽ」に傍点]を向こうとしたけれどももうおそかった。葉子は夫人の前に軽く頭を下げていた。夫人もやむを得ず挨拶《あいさつ》のまねをして、高飛車《たかびしゃ》に出るつもりらしく、
 「あなたはどなた?」
 いかにも横柄《おうへい》にさきがけて口をきった。
 「早月葉《さつきよう》でございます」
 葉子は対等の態度で悪《わる》びれもせずこう受けた。
 「絵島丸ではいろいろお世話様になってありがとう存じました。あのう……報正新報も拝見させていただきました。(夫人の顔色が葉子の言葉一つごとに変わるのを葉子は珍しいものでも見るようにまじ[#「まじ」に傍点]まじとながめながら)たいそうおもしろうございました事。よくあんなにくわしく御通信になりましてねえ、お忙しくいらっしゃいましたろうに。……倉地さんもおりよくここに来合わせていらっしゃいますから……今ちょっと切符を買いに……お連れ申しましょうか」
 田川夫人は見る見るまっさおになってしまっていた。折り返して
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