を」
愛子は少しうつむきかげんに黙ってしまった、こういう態度を取った時の愛子のしぶとさ[#「しぶとさ」に傍点]を葉子はよく知っていた。葉子の神経はびり[#「びり」に傍点]びりと緊張して来た。
「持って来てお見せ」
そう厳格にいいながら、葉子はそこに岡のいる事も意識の中に加えていた。愛子は執拗《しつよう》に黙ったまますわっていた。しかし葉子がもう一度催促の言葉を出そうとすると、その瞬間に愛子はつ[#「つ」に傍点]と立ち上がって部屋《へや》を出て行った。
葉子はそのすきに岡の顔を見た。それはまた無垢《むく》童貞の青年が不思議な戦慄《せんりつ》を胸の中に感じて、反感を催すか、ひき付けられるかしないではいられないような目で岡を見た。岡は少女のように顔を赤めて、葉子の視線を受けきれないでひとみをたじろがしつつ目を伏せてしまった。葉子はいつまでもそのデリケートな横顔を注視《みつめ》つづけた。岡は唾《つば》を飲みこむのもはばかるような様子をしていた。
「岡さん」
そう葉子に呼ばれて、岡はやむを得ずおずおず頭を上げた。葉子は今度はなじるようにその若々しい上品な岡を見つめていた。
そこに愛
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