り[#「すっかり」に傍点]違った世界を見るようでいながら、自分の心持ちが残らずいってあるようでもあるんで……わたしそれが好きなんです。リアリストというわけではありませんけれども……」
 「でもこの本の皮肉は少しやせ我慢ね。あなたのような方《かた》にはちょっと不似合いですわ」
 「そうでしょうか」
 岡は何とはなく今にでも腫《は》れ物《もの》にさわられるかのようにそわそわしていた。会話は少しもいつものようにははずまなかった。葉子はいらいらしながらもそれを顔には見せないで今度は愛子のほうに槍先《やりさき》を向けた。
 「愛さんお前こんな本をいつお買いだったの」
 といってみると、愛子は少しためらっている様子だったが、すぐに素直な落ち着きを見せて、
 「買ったんじゃないんですの。古藤さんが送ってくださいましたの」
 といった。葉子はさすがに驚いた。古藤はあの会食の晩、中座したっきり、この家には足踏みもしなかったのに……。葉子は少し激しい言葉になった。
 「なんだってまたこんな本を送っておよこしなさったんだろう。あなたお手紙でも上げたのね」
 「えゝ、……くださいましたから」
 「どんなお手紙
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