と少しも変わらない態度で、柔順に無表情に縁板の上にちょっと膝《ひざ》をついて挨拶した。しかしその沈着にも係わらず、葉子は愛子が今まで涙を目にためていたのをつきとめた。岡も愛子も明らかに葉子の顔や髪の様子の変わったのに気づいていないくらい心に余裕のないのが明らかだった。
「貞《さあ》ちゃんは」
と葉子は立ったままで尋ねてみた。二人《ふたり》は思わずあわてて答えようとしたが、岡は愛子をぬすみ見るようにして控えた。
「隣の庭に花を買いに行ってもらいましたの」
そう愛子が少し下を向いて髷《まげ》だけを葉子に見えるようにして素直《すなお》に答えた。「ふゝん」と葉子は腹の中でせせら笑った。そして始めてそこにすわって、じっ[#「じっ」に傍点]と岡の目を見つめながら、
「何? 読んでいらしったのは」
といって、そこにある四六細型《しろくほそがた》の美しい表装の書物を取り上げて見た。黒髪を乱した妖艶《ようえん》な女の頭、矢で貫かれた心臓、その心臓からぽたぽた落ちる血のしたたりがおのずから字になったように図案された「乱れ髪」という標題――文字に親しむ事の大きらいな葉子もうわさで聞いていた有名な
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