われぬ薄い紫色の色素がそのまわりに現われて来ていた。それが葉子の目にたとえば森林に囲まれた澄んだ湖のような深みと神秘とを添えるようにも見えた。鼻筋はやせ細って精神的な敏感さをきわ立たしていた。頬《ほお》の傷々《いたいた》しくこけたために、葉子の顔にいうべからざる暖かみを与える笑《え》くぼを失おうとしてはいたが、その代わりにそこには悩ましく物思わしい張りを加えていた。ただ葉子がどうしても弁護のできないのはますます目立って来た固い下顎《したあご》の輪郭だった。しかしとにもかくにも肉情の興奮の結果が顔に妖凄《ようせい》な精神美を付け加えているのは不思議だった。葉子はこれまでの化粧法を全然改める必要をその朝になってしみじみと感じた。そして今まで着ていた衣類までが残らず気に食わなくなった。そうなると葉子は矢もたてもたまらなかった。
葉子は紅《べに》のまじった紅粉《おしろい》をほとんど使わずに化粧をした。顎《あご》の両側と目のまわりとの紅粉をわざと薄くふき取った。枕《まくら》を入れずに前髪を取って、束髪《そくはつ》の髷《まげ》を思いきり下げて結ってみた。鬢《びん》だけを少しふくらましたので顎《あ
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