やと火の霧で包まれたり、透明な氷の水で満たされるような頭脳の狂い、……こういう現象は日一日と生命に対する、そして人生に対する葉子の猜疑《さいぎ》を激しくした。
有頂天《うちょうてん》の溺楽《できらく》のあとに襲って来るさびしいとも、悲しいとも、はかないとも形容のできないその空虚さは何よりも葉子につらかった。たといその場で命を絶《た》ってもその空虚さは永遠に葉子を襲うもののようにも思われた。ただこれからのがれるただ一つの道は捨てばちになって、一時的のものだとは知り抜きながら、そしてそのあとにはさらに苦しい空虚さが待ち伏せしているとは覚悟しながら、次の溺楽《できらく》を逐《お》うほかはなかった。気分のすさんだ倉地も同じ葉子と同じ心で同じ事を求めていた。こうして二人《ふたり》は底止《ていし》する所のないいずこかへ手をつないで迷い込んで行った。
ある朝葉子は朝湯を使ってから、例の六畳で鏡台に向かったが一日一日に変わって行くような自分の顔にはただ驚くばかりだった。少し縦に長く見える鏡ではあるけれども、そこに映る姿はあまりに細っていた。その代わり目は前にも増して大きく鈴を張って、化粧焼けとも思
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