人間たちを胸のすき切るまで思い存分笑ってやるのに。そう思うと岡の煮え切らないような態度が歯がゆくもあった。しかしなんといっても抱きしめたいほど可憐《かれん》なのは岡の繊美なさびしそうな姿だった。岡は上手《じょうず》に入れられた甘露《かんろ》をすすり終わった茶《ちゃ》わんを手の先に据《す》えて綿密にその作りを賞翫《しょうがん》していた。
 「お覚えになるようなものじゃございません事よ」
 岡は悪い事でもしていたように顔を赤くしてそれを下においた。彼はいいかげんな世辞はいえないらしかった。
 岡は始めて来た家に長居《ながい》するのは失礼だと来た時から思っていて、機会あるごとに座を立とうとするらしかったが、葉子はそういう岡の遠慮に感づけば感づくほど巧みにもすべての機会を岡に与えなかった。
 「もう少しお待ちになると雪が小降りになりますわ。今、こないだインドから来た紅茶を入れてみますから召し上がってみてちょうだい。ふだんいいものを召し上がりつけていらっしゃるんだから、鑑定をしていただきますわ。ちょっと、……ほんのちょっと待っていらしってちょうだいよ」
 そういうふうにいって岡を引き止めた。始め
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