時々いらしったんだけれどもついにお目にかかるおりがなかったわね。これが愛子これが貞世です」
そういいながら葉子は倉地のほうを向くともうくすぐったい[#「くすぐったい」に傍点]ような顔つきをせずにはいられなかった。倉地は渋い笑いを笑いながら案外まじめに、
「お初に(といってちょっと頭を下げた)二人とも美しいねえ」
そういって貞世の顔をちょっ[#「ちょっ」に傍点]と見てからじっ[#「じっ」に傍点]と目を愛子にさだめた。愛子は格別恥じる様子もなくその柔和な多恨な目を大きく見開いてまんじり[#「まんじり」に傍点]と倉地を見やっていた。それは男女の区別を知らぬ無邪気な目とも見えた。先天的に男というものを知りぬいてその心を試みようとする淫婦《いんぷ》の目とも見られない事はなかった。それほどその目は奇怪な無表情の表情を持っていた。
「始めてお目にかかるが、愛子さんおいくつ」
倉地はなお愛子を見やりながらこう尋ねた。
「わたし始めてではございません。……いつぞやお目にかかりました」
愛子は静かに目を伏せてはっきり[#「はっきり」に傍点]と無表情な声でこういった。愛子があの年ごろで男の前
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