いっていたがいつのまにかねむくなったと見えて、あまり静かなので二階に行って見ると、二人《ふたり》とも寝床にはいっていた。つやには暇が出してあった。葉子に内所《ないしょ》で「報正新報」を倉地に取り次いだのは、たとい葉子に無益な心配をさせないためだという倉地の注意があったためであるにもせよ、葉子の心持ちを損じもし不安にもした。つやが葉子に対しても素直な敬愛の情をいだいていたのは葉子もよく心得ていた。前にも書いたように葉子は一目見た時からつやが好きだった。台所などをさせずに、小間使いとして手回りの用事でもさせたら顔かたちといい、性質といい、取り回しといいこれほど理想的な少女はないと思うほどだった。つやにも葉子の心持ちはすぐ通じたらしく、つやはこの家のために陰日向《かげひなた》なくせっせ[#「せっせ」に傍点]と働いたのだった。けれども新聞の小さな出来事一つが葉子を不安にしてしまった。倉地が双鶴館《そうかくかん》の女将《おかみ》に対しても気の毒がるのを構わず、妹たちに働かせるのがかえっていいからとの口実のもとに暇をやってしまったのだった。で勝手のほうにも人気《ひとけ》はなかった。
葉子は何を原
前へ
次へ
全465ページ中144ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
有島 武郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング