ている親類がいいかげんな口実《こうじつ》を作って只《ただ》持って行ってしまった。父の書斎道具や骨董品《こっとうひん》は蔵書と一緒に糶売《せりう》りをされたが、売り上げ代はとうとう葉子の手にははいらなかった。住居《すまい》は住居で、葉子の洋行後には、両親の死後何かに尽力したという親類の某が、二束三文《にそくさんもん》で譲り受ける事に親族会議で決まってしまった。少しばかりある株券と地所《じしょ》とは愛子と貞世《さだよ》との教育費にあてる名儀で某々が保管する事になった。そんな勝手放題なまねをされるのを葉子は見向きもしないで黙っていた。もし葉子が素直《すなお》な女だったら、かえって食い残しというほどの遺産はあてがわれていたに違いない。しかし親族会議では葉子を手におえない女だとして、他所《よそ》に嫁入って行くのをいい事に、遺産の事にはいっさい関係させない相談をしたくらいは葉子はとうに感づいていた。自分の財産となればなるべきものを一部分だけあてがわれて、黙って引っ込んでいる葉子ではなかった。それかといって長女ではあるが、女の身として全財産に対する要求をする事の無益なのも知っていた。で「犬にやるつも
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