。そのほうが実際格好ですからね。持ち合わせもなしに東京に着きなさる事を思えば、土産なんかどうでもいいと思うんですがね」
 「東京に着きさえすればお金はどうにでもしますけれども、お土産《みやげ》は……あなた横浜の仕入れものはすぐ知れますわ……御覧なさいあれを」
 といって棚《たな》の上にある帽子入れのボール箱に目をやった。
 「古藤さんに連れて行っていただいてあれを買った時は、ずいぶん吟味したつもりでしたけれども、船に来てから見ているうちにすぐあきてしまいましたの。それに田川の奥さんの洋服姿を見たら、我慢にも日本で買ったものをかぶったり着たりする気にはなれませんわ」
 そういってるうちに木村は棚から箱をおろして中をのぞいていたが、
 「なるほど型はちっと古いようですね。だが品《しな》はこれならこっち[#「こっち」に傍点]でも上の部ですぜ」
 「だからいやですわ。流行おくれとなると値段の張ったものほどみっともないんですもの」
 しばらくしてから、
 「でもあのお金はあなた御入用ですわね」
 木村はあわてて弁解的に、
 「いゝえ、あれはどの道あなたに上げるつもりでいたんですから……」
 とい
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