いたずららしいにこにこした愛矯《あいきょう》を顔いちめんにたたえて、
 「なんという気さく[#「さく」に傍点]なんでしょう。わたし、 あんなおじいさんのお内儀《かみ》さんになってみたい……だからね、いいものをやっちまった」
 きょとり[#「きょとり」に傍点]としてまじ[#「まじ」に傍点]まじ木村のむっつり[#「むっつり」に傍点]とした顔を見やる様子は大きな子供とより思えなかった。
 「あなたからいただいたエンゲージ・リングね、あれをやりましてよ。だってなんにもないんですもの」
 なんともいえない媚《こ》びをつつむおとがい[#「おとがい」に傍点]が二重になって、きれいな歯並みが笑いのさざ波のように口びるの汀《みぎわ》に寄せたり返したりした。
 木村は、葉子という女はどうしてこうむら[#「むら」に傍点]気で上《うわ》すべりがしてしまうのだろう、情けないというような表情を顔いちめんにみなぎらして、何かいうべき言葉を胸の中で整えているようだったが、急に思い捨てたというふうで、黙ったままでほっ[#「ほっ」に傍点]と深いため息をついた。
 それを見ると今まで珍しく押えつけられていた反抗心が、またも
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