「きっぱり」に傍点]思いきったように、火のように熱く目にたまったままで流れずにいる涙を、ハンケチでぎゅっ[#「ぎゅっ」に傍点]と押しぬぐいながら、黯然《あんぜん》と頭をたれた木村に、
「もうやめましょうこんなお話。こんな事をいってると、いえばいうほど先が暗くなるばかりです。ほんとに思いきって不仕合わせな人はこんな事をつべこべ[#「つべこべ」に傍点]と口になんぞ出しはしませんわ。ね、いや、あなたは自分のほうからめいってしまって、わたしのいった事ぐらいでなんですねえ、男のくせに」
木村は返事もせずにまっさおになってうつむいていた。
そこに「御免なさい」というかと思うと、いきなり[#「いきなり」に傍点]戸をあけてはいって来たものがあった。木村も葉子も不意を打たれて気先《きさき》をくじかれながら、見ると、いつぞや錨綱《びょうづな》で足をけがした時、葉子の世話になった老水夫だった。彼はとうとう跛脚《びっこ》になっていた。そして水夫のような仕事にはとても役に立たないから、幸いオークランドに小農地を持ってとにかく暮らしを立てている甥《おい》を尋ねて厄介《やっかい》になる事になったので、礼かたが
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