しょう」
といってさすがに苦しげに笑いにまぎらそうとした。そのくせ木村の胸にはどっしり[#「どっしり」に傍点]と重そうな金鎖がかかって、両手の指には四つまで宝石入りの指輪がきらめいていた。葉子は木村のいう事を聞きながらその指に目をつけていたが、四つの指輪の中に婚約の時取りかわした純金の指輪もまじっているのに気がつくと、自分の指にはそれをはめていなかったのを思い出して、何くわぬ様子で木村の膝《ひざ》の上から手を引っ込めて顎《あご》までふとんをかぶってしまった。木村は引っ込められた手に追いすがるように椅子《いす》を乗り出して、葉子の顔に近く自分の顔をさし出した。
「葉子さん」
「何?」
また Love−scene か。そう思って葉子はうんざり[#「うんざり」に傍点]したけれども、すげなく顔をそむけるわけにも行かず、やや当惑していると、おりよく事務長が型ばかりのノックをしてはいって来た。葉子は寝たまま、目でいそいそと事務長を迎えながら、
「まあようこそ……先ほどは失礼。なんだかくだらない事を考え出していたもんですから、ついわがままをしてしまってすみません……お忙しいでしょう」
と
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