たんですけれども、わたしのほうも御承知のとおりでしょう。今度こっちに来るにつけても、それは困って、ありったけのものを払ったりして、ようやく間に合わせたくらいだったもんですから……」
なおいおうとするのを木村は忙《せわ》しく打ち消すようにさえぎって、
「それは充分わかっています」
と顔を上げた拍子《ひょうし》に涙のしずくがぽたり[#「ぽたり」に傍点]と鼻の先からズボンの上に落ちたのを見た。葉子は、泣いたために妙に脹《は》れぼったく赤くなって、てらてらと光る木村の鼻の先が急に気になり出して、悪いとは知りながらも、ともするとそこへばかり目が行った。
木村は何からどう話し出していいかわからない様子だった。
「わたしの電報をビクトリヤで受け取ったでしょうね」
などともてれ[#「てれ」に傍点]隠しのようにいった。葉子は受け取った覚えもないくせにいいかげんに、
「えゝ、ありがとうございました」
と答えておいた。そして一時《いっとき》も早くこんな息気《いき》づまるように圧迫して来る二人《ふたり》の間の心のもつれからのがれる術《すべ》はないかと思案していた。
「今始めて事務長から聞いた
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