たものか迷う様子で、二人《ふたり》の間には握手のまま意味深げな沈黙が取りかわされた。その沈黙はしかし感傷的という程度であるにはあまりに長く続き過ぎたので、外界の刺激に応じて過敏なまでに満干《みちひ》のできる葉子の感情は今まで浸っていた痛烈な動乱から一皮《ひとかわ》一皮平調に還《かえ》って、果てはその底に、こう嵩《こう》じてはいとわしいと自分ですらが思うような冷ややかな皮肉が、そろそろ頭を持ち上げるのを感じた。握り合わせたむずかゆ[#「むずかゆ」に傍点]いような手を引っ込めて、目もとまでふとんをかぶって、そこから自分の前に立つ若い男の心の乱れを嘲笑《あざわら》ってみたいような心にすらなっていた。長く続く沈黙が当然ひき起こす一種の圧迫を木村も感じてうろたえたらしく、なんとかして二人《ふたり》の間の気まずさを引き裂くような、心の切《せつ》なさを表わす適当の言葉を案じ求めているらしかったが、とうとう涙に潤った低い声で、もう一度、
「葉子さん」
と愛するものの名を呼んだ。それは先ほど呼ばれた時のそれに比べると、聞き違えるほど美しい声だった。葉子は、今まで、これほど切《せつ》な情をこめて自分の
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