わゆる「姉御《あねご》」扱いにしていた。
「向こうに着いたらこれで悶着《もんちゃく》ものだぜ。田川の嚊《かかあ》め、あいつ、一味噌《ひとみそ》すらずにおくまいて」
「因業《いんごう》な生まれだなあ」
「なんでも正面からぶっ突かって、いさくさいわせず決めてしまうほかはないよ」
などと彼らは戯談《じょうだん》ぶった口調で親身《しんみ》な心持ちをいい現わした。事務長は眉《まゆ》も動かさずに、机によりかかって黙っていた。葉子はこれらの言葉からそこに居合わす人々の性質や傾向を読み取ろうとしていた。興録のほかに三人いた。その中の一人は甲斐絹《かいき》のどてら[#「どてら」に傍点]を着ていた。
「このままこの船でお帰りなさるがいいね」
とそのどてら[#「どてら」に傍点]を着た中年の世渡り巧者らしいのが葉子の顔を窺《うかが》い窺いいうと、事務長は少し屈託らしい顔をして物懶《ものう》げに葉子を見やりながら、
「わたしもそう思うんだがどうだ」
とたずねた。葉子は、
「さあ……」
と生返事《なまへんじ》をするほかなかった。始めて口をきく幾人もの男の前で、とっかは[#「とっかは」に傍点]物
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