った。しかし木部の時でも二か月とは同棲《どうせい》していなかったとも思った。倉地と離れては一日でもいられそうにはなかった。しかしこんな事を考えるには船がシヤトルに着いてからでも三日や四日の余裕はある。倉地はその事は第一に考えてくれているに違いない。葉子は今の平和をしいてこんな問題でかき乱す事を欲しなかったばかりでなくとてもできなかった。
 葉子はそのくせ、船客と顔を見合わせるのが不快でならなかったので、事務長に頼んで船橋に上げてもらった。船は今|瀬戸内《せとうち》のような狭い内海を動揺もなく進んでいた。船長はビクトリアで傭《やと》い入れた水先《みずさき》案内と二人ならんで立っていたが、葉子を見るといつものとおり顔をまっ赤《か》にしながら帽子を取って挨拶《あいさつ》した。ビスマークのような顔をして、船長より一《ひと》がけも二《ふた》がけも大きい白髪の水先案内はふと振り返ってじっ[#「じっ」に傍点]と葉子を見たが、そのまま向き直って、
 「Charmin' little lassie ! wha' is that ?」
 とスコットランド風《ふう》な強い発音で船長に尋ねた。葉子にはわからない
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