机の上の紙を屑《くず》かごになげすてて、ファウンテン・ペンを物陰にほうりこんだ。そしてせかせかとあたりを見回したが、あわてながら眼窓《めまど》のカーテンをしめきった。そしてまた立ちすくんだ、自分の心の恐ろしさにまどいながら。
 外部では握《にぎ》り拳《こぶし》で続けさまに戸をたたいている。葉子はそわそわと裾前《すそまえ》をかき合わせて、肩越しに鏡を見やりながら涙をふいて眉《まゆ》をなでつけた。
 「早月さん!![#「!!」は横一列]」
 葉子はややしばしとつおいつ[#「とつおいつ」に傍点]躊躇《ちゅうちょ》していたが、とうとう決心して、何かあわてくさって、鍵《かぎ》をがちがち[#「がちがち」に傍点]やりながら戸をあけた。
 事務長はひどく酔ってはいって来た。どんなに飲んでも顔色もかえないほどの強酒《ごうしゅ》な倉地が、こんなに酔うのは珍しい事だった。締めきった戸に仁王立《におうだ》ちによりかかって、冷然とした様子で離れて立つ葉子をまじまじと見すえながら、
 「葉子さん、葉子さんが悪ければ早月さんだ。早月さん……僕のする事はするだけの覚悟があってするんですよ。僕はね、横浜以来あなたに惚《
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