しく恨めしく死」
[#引用文ここまで]
 となんのくふうもなく、よく意味もわからないで一瀉千里《いっしゃせんり》に書き流して来たが、「死」という字に来ると、葉子はペンも折れよといらいらしくその上を塗り消した。思いのままを事務長にいってやるのは、思い存分自分をもてあそべといってやるのと同じ事だった。葉子は怒りに任せて余白を乱暴にいたずら書きでよごしていた。
 と、突然船医の部屋から高々と倉地の笑い声が聞こえて来た。葉子はわれにもなく頭《つむり》を上げて、しばらく聞き耳を立ててから、そっ[#「そっ」に傍点]と戸口に歩み寄ったが、あとはそれなりまた静かになった。
 葉子は恥ずかしげに座に戻《もど》った。そして紙の上に思い出すままに勝手な字を書いたり、形の知れない形を書いてみたりしながら、ずきん[#「ずきん」に傍点]ずきんと痛む頭をぎゅっ[#「ぎゅっ」に傍点]と肘《ひじ》をついた片手で押えてなんという事もなく考えつづけた。
 念が届けば木村にも定子にもなんの用があろう。倉地の心さえつかめばあとは自分の意地《いじ》一つだ。そうだ。念が届かなければ……念が届かなければ……届かなければあらゆるものに
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