を見ると、船舷《ふなばた》に立ちならんで物珍しげに陸地を見物していたステヤレージの男女の客は一斉《いっせい》に手をたたいてどよめいた。葉子はあたりを見回した。西洋の婦人たちは等しく葉子を見やって、その花々しい服装から軽率《かるはずみ》らしい挙動を苦々しく思うらしい顔つきをしていた。それらの外国人の中には田川夫人もまじっていた。
検疫官は絵島丸が残して行った白沫《はくまつ》の中で、腰をふらつかせながら、笑い興ずる群集にまで幾度も頭を下げた。群集はまた思い出したように漫罵《まんば》を放って笑いどよめいた。それを聞くと日本語のよくわかる白髪の船長は、いつものように顔を赤くして、気の毒そうに恥ずかしげな目を葉子に送ったが、葉子がはした[#「はした」に傍点]ない群集の言葉にも、苦々《にがにが》しげな船客の顔色にも、少しも頓着《とんじゃく》しないふうで、ほほえみ続けながらモーター・ボートのほうを見守っているのを見ると、未通女《おぼこ》らしくさらにまっ赤《か》になってその場をはずしてしまった。
葉子は何事も屈託なくただおもしろかった。からだじゅうをくすぐるような生の歓《よろこ》びから、ややもする
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