しまったのだ。
葉子のなめたすべての経験は、男に束縛を受ける危険を思わせるものばかりだった。しかしなんという自然のいたずらだろう。それとともに葉子は、男というものなしには一刻も過ごされないものとなっていた。砒石《ひせき》の用法を謬《あやま》った患者が、その毒の恐ろしさを知りぬきながら、その力を借りなければ生きて行けないように、葉子は生の喜びの源を、まかり違えば、生そのものを虫ばむべき男というものに、求めずにはいられないディレンマに陥ってしまったのだ。
肉欲の牙《きば》を鳴らして集まって来る男たちに対して、(そういう男たちが集まって来るのはほんとうは葉子自身がふりまく香《にお》いのためだとは気づいていて)葉子は冷笑しながら蜘蛛《くも》のように網を張った。近づくものは一人《ひとり》残らずその美しい四《よ》つ手網《であみ》にからめ取った。葉子の心は知らず知らず残忍になっていた。ただあの妖力《ようりょく》ある女郎蜘蛛《じょろうぐも》のように、生きていたい要求から毎日その美しい網を四つ手に張った。そしてそれに近づきもし得ないでののしり騒ぐ人たちを、自分の生活とは関係のない木か石ででもあるよう
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