れはねわたしの妻子ですんだ。荊妻《けいさい》と豚児《とんじ》どもですよ」
といって高々と笑いかけたが、ふと笑いやんで、険しい目で葉子をちらっと見た。
「まあそう。ちゃんとお写真をお飾りなすって、おやさしゅうござんすわね」
葉子はしんなり[#「しんなり」に傍点]と立ち上がってその写真の前に行った。物珍しいものを見るという様子をしてはいたけれども、心の中には自分の敵がどんな獣物《けだもの》であるかを見きわめてやるぞという激しい敵愾心《てきがいしん》が急に燃えあがっていた。前には芸者ででもあったのか、それとも良人《おっと》の心を迎えるためにそう造ったのか、どこか玄人《くろうと》じみたきれいな丸髷《まるまげ》の女が着飾って、三人の少女を膝《ひざ》に抱いたりそばに立たせたりして写っていた。葉子はそれを取り上げて孔《あな》のあくほどじっ[#「じっ」に傍点]と見やりながらテーブルの前に立っていた。ぎこちない沈黙がしばらくそこに続いた。
「お葉さん」(事務長は始めて葉子をその姓で呼ばずにこう呼びかけた)突然震えを帯びた、低い、重い声が焼きつくように耳近く聞こえたと思うと、葉子は倉地の大きな胸と
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