造り声の中にかすかな親しみをこめて見せた言葉も、肉感的に厚みを帯びた、それでいて賢《さか》しげに締まりのいい二つの口びるにふさわしいものとなっていた。
 「きょう船が検疫所に着くんです、きょうの午後に。ところが検疫医がこれなんだ」
 事務長は朋輩《ほうばい》にでも打ち明けるように、大きな食指を鍵形《かぎがた》にまげて、たぐるような格好をして見せた。葉子がちょっと判じかねた顔つきをしていると、
 「だから飲ましてやらんならんのですよ。それからポーカーにも負けてやらんならん。美人がいれば拝ましてもやらんならん」
 となお手まねを続けながら、事務長は枕《まくら》もとにおいてある頑固《がんこ》なパイプを取り上げて、指の先で灰を押しつけて、吸い残りの煙草《たばこ》に火をつけた。
 「船をさえ見ればそうした悪戯《わるさ》をしおるんだから、海|坊主《ぼうず》を見るようなやつです。そういうと頭のつるり[#「つるり」に傍点]とした水母《くらげ》じみた入道らしいが、実際は元気のいい意気な若い医者でね。おもしろいやつだ。一つ会ってごらん。わたしでからがあんな所に年じゅう置かれればああなるわさ」
 といって、
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