うに不愉快だった。もう三日ほどすると船はいやでもシヤトルの桟橋につながれるのだ。向こうに見えるあの陸地の続きにシヤトルはある。あの松の林が切り倒されて少しばかりの平地となった所に、ここに一つかしこに一つというように小屋が建ててあるが、その小屋の数が東に行くにつれてだんだん多くなって、しまいには一かたまりの家屋ができる。それがシヤトルであるに違いない。うらさびしく秋風の吹きわたるその小さな港町の桟橋に、野獣のような諸国の労働者が群がる所に、この小さな絵島丸が疲れきった船体を横たえる時、あの木村が例のめまぐるしい機敏さで、アメリカ風《ふう》になり済ましたらしい物腰で、まわりの景色に釣《つ》り合わない景気のいい顔をして、船梯子《ふなばしご》を上って来る様子までが、葉子には見るように想像された。
 「いやだいやだ。どうしても木村と一緒になるのはいやだ。私は東京に帰ってしまおう」
 葉子はだだっ子らしく今さらそんな事を本気に考えてみたりしていた。
 水夫長と一人《ひとり》のボーイとが押し並んで、靴《くつ》と草履《ぞうり》との音をたてながらやって来た。そして葉子のそばまで来ると、葉子が振り返ったの
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