うわさをし始めた。
 「事務長のそばにすわって食事をするのはどうもいやでなりませんの」
 「そんなら早月《さつき》さんに席を代わってもらったらいいでしょう」
 葉子は闇《やみ》の中で鋭く目をかがやかしながら夫人の様子をうかがった。
 「でも夫婦がテーブルにならぶって法はありませんわ……ねえ早月さん」
 こう戯談《じょうだん》らしく夫人はいって、ちょっと葉子のほうを振り向いて笑ったが、べつにその返事を待つというでもなく、始めて葉子の存在に気づきでもしたように、いろいろと身の上などを探りを入れるらしく聞き始めた。田川博士も時々親切らしい言葉を添えた。葉子は始めのうちこそつつましやかに事実にさほど遠くない返事をしていたものの、話がだんだん深入りして行くにつれて、田川夫人という人は上流の貴夫人だと自分でも思っているらしいに似合わない思いやりのない人だと思い出した。それはあり内《うち》の質問だったかもしれない。けれども葉子にはそう思えた。縁もゆかりもない人の前で思うままな侮辱を加えられるとむっ[#「むっ」に傍点]とせずにはいられなかった。知った所がなんにもならない話を、木村の事まで根はり葉はり問
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