に世慣れて才走ったその言葉は、人の上に立ちつけた重みを見せた。葉子はにこやかに黙ってうなずきながら、位を一段落として会釈するのをそう不快には思わぬくらいだった。二人《ふたり》の間の挨拶《あいさつ》はそれなりで途切れてしまったので、田川|博士《はかせ》はおもむろに事務長に向かってし続けていた話の糸目をつなごうとした。
「それから……その……」
しかし話の糸口は思うように出て来なかった。事もなげに落ち付いた様子に見える博士の心の中に、軽い混乱が起こっているのを、葉子はすぐ見て取った。思いどおりに一座の気分を動揺させる事ができるという自信が裏書きされたように葉子は思ってそっと満足を感じていた。そしてボーイ長のさしずでボーイらが手器用《てぎよう》に運んで来たポタージュをすすりながら、田川博士のほうの話に耳を立てた。
葉子が食堂に現われて自分の視界にはいってくると、臆面《おくめん》もなくじっ[#「じっ」に傍点]と目を定めてその顔を見やった後に、無頓着《むとんじゃく》にスプーンを動かしながら、時々食卓の客を見回して気を配っていた事務長は、下くちびるを返して鬚《ひげ》の先を吸いながら、塩さびの
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