の間でいちばん早くきげんを直して相好《そうごう》を変えたのは五十川《いそがわ》女史だった。子供を相手にして腹を立てた、それを年がいないとでも思ったように、気を変えてきさく[#「きさく」に傍点]に立ちじたくをしながら、
 「皆さんいかが、もうお暇《いとま》にいたしましたら……お別れする前にもう一度お祈りをして」
 「お祈りをわたしのようなもののためになさってくださるのは御無用に願います」
 葉子は和らぎかけた人々の気分にはさらに頓着《とんじゃく》なく、壁に向けていた目を貞世に落として、いつのまにか寝入ったその人の艶々《つやつや》しい顔をなでさすりながらきっぱり[#「きっぱり」に傍点]といい放った。
 人々は思い思いな別れを告げて帰って行った。葉子は貞世がいつのまにか膝《ひざ》の上に寝てしまったのを口実にして人々を見送りには立たなかった。
 最後の客が帰って行ったあとでも、叔父叔母《おじおば》は二階を片づけには上がってこなかった。挨拶《あいさつ》一つしようともしなかった。葉子は窓のほうに頭を向けて、煉瓦《れんが》の通りの上にぼうっ[#「ぼうっ」に傍点]と立つ灯《ひ》の照り返しを見やりながら
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