途上
嘉村礒多

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)渚《なぎさ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二六時中|蒼白《あをじろ》い

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いち/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
*半濁点付きの二倍の踊り字は「/゜\」
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 六里の山道を歩きながら、いくら歩いても渚《なぎさ》の尽きない細長い池が、赤い肌《はだ》の老松の林つゞきの中から見え隠れする途上、梢《こずゑ》の高い歌ひ声を聞いたりして、日暮れ時分に父と私とはY町に着いた。其《その》晩は場末の安宿に泊り翌日父は私をY中学の入学式につれて行き、そして我子を寄宿舎に托《たく》して置くと、直《す》ぐ村へ帰つて行つた。別《わか》れ際《ぎは》に父は、舎費を三ヶ月分納めたので、先刻《さつき》渡した小遣銭《こづかひせ
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