で、あんまり遅いさかい、どうかと思うて来たのやとこ。」
「えーい。そこな親爺様も行ったのかいね。そうかいね、まあ、こりゃ何ちゅうこっちゃ!」
恭三の母は如何にも意外だという風に言った。
「まことね、あんな身体して居って、程のあった、何う気が向いたか出掛けて行ったわいね。」
「必然家の恭さんと一緒に飲んどるんやろう。」と浅七が口を入れた。
「そうかも知れん。」と権六の細君が言って、少し気を変えて、「今年の祭は大変賑やかやったそうな、何でも神輿が二十一台に大旗が三十本も出たといね。」
「えいそうかいね、何んせ近年にない豊作やさかい。」
「おいね、然《そ》う言うて家の親爺も、のこ/\と出掛けて行ったのやとこと。もう帰りそうなもんじゃがのう。」
「それでも其家《そこ》の親爺様は幾何《いくら》飲んでも、家の親爺の様に性根なしにならんさかい宜いけれど。」
「そうでも無いとこと、……まあもう暫く待って見ましょう。」
こう言って権六の細君は帰った。
それから暫くしてから隣りの六平が子供を連れて帰って来た。先刻迎いに行った女房とは途《みち》が違って遇《あ》わなかったということだった。
「可愛相に、
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