の光は薄暗く其煙の中に見える。
「どうやら分らんちゃ。屹度《きっと》七海《しつみ》の連中に引張られて飲んどるのじゃろう。」と母は言った。
「今年ゃ七海に神輿《みこし》を買うて、富来《とぎ》祭に出初めやさかい、大方家のお父様ねも飲ましとるに違いないねえ。」
浅七は炉の中から松葉を二三本取って揃えたり爪で切ったりしながら言った。
「宜い加減に帰りゃいゝのやれど、ほんとね飲んだと来たら我身知らずで困るとこ、……さあ、待っとらんとお前たちゃ先に飯をすまいたらよかろう。いつ帰るやら分らんもの。」と母親はお膳を出しかけた。
「まあもう暫く待って見ましょう。」と恭三は言って、煙にむせて二三度咳をした。
「六平の者共は帰ったかいね。」と浅七が尋ねた。
「六平もまだや、さき方|嚊《かゝあ》さ迎に行ったれどどっちも帰らんわいの。子供を仰山《ぎょうさん》連れとるさかいに大丈夫やろうけれど、あんまり遅いさかいまた子供を放《ほ》っといて飲んで歩くのやないかちゅうて心配しながら行った。」
「あの六平の禿罐《はげかん》も飲助やさかいのう。此前もほら酒見祭を見ね行った時ね、お前様、あの常坊を首馬に載《の》せたなりに
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