らせて外に遊びに出したからである。いや、むしろ追い出したからである。私は別に小遣銭をねだったのではなかった。だのに、父はいつもよりはたくさんの小遣をくれて永く遊んで来いというのだった。しかも母が帰って来ると父は、母にこういって私のことを訴えるのだった。
「この子はひどい子だよ。わしの甘い事を知って、あんたが出かけるとすぐ、お小遣をせびって飛び出すんだからね」
そのうちに年も暮になった。
大晦日の晩のことを私は覚えている。母は弟をおぶって街に出かけた。父と叔母と私とは茶の間で炬燵にあたっていた。
なんとはなしにしめっぽい[#「しめっぽい」に傍点]じめじめした夜だった。いつにも似ず、父も叔母も暗い顔をしていた。そのうち父はうつぶせ[#「うつぶせ」に傍点]にしていた顔をあげてしんみりとした調子でいった。
「どうしてわしの家はこうも運がわるいだろう。わしにはまだ運が向いて来ないんだね、来年はどうかなってくれればいいが……」
人には運というものがある。それが向いて来ないうちはどうにもならないものだ。これが迷信家の私の父の哲学であった。父がしょっちゅう[#「しょっちゅう」に傍点]そんなこ
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